工業用潤滑油とは?種類・用途・選び方からOEM活用まで専門メーカーが解説
工業用潤滑油は、工場設備や産業機械を「止めない」ために欠かせない重要な要素です。しかし実際の現場では、「とりあえず指定粘度だから」「今まで問題なかったから」といった理由で選ばれ、潤滑油本来の役割や適合性まで深く検討されていないケースも少なくありません。
工業用潤滑油は、摩耗や焼付きの防止だけでなく、冷却、清浄、防錆、密封性の補助など、設備を総合的に守るための“機能部材”です。用途や使用条件に合わない潤滑油を使い続けると、異音や摩耗、スラッジ発生といったトラブルが徐々に進行し、結果的に設備寿命や生産性に大きな影響を与えます。
本記事では、工業用潤滑油の基本的な考え方から、種類・用途・選び方、粘度や規格の見方、さらに市販品で限界を感じた場合のOEM・オリジナル潤滑油という選択肢までを、潤滑油専門メーカーの視点でわかりやすく解説します。現場トラブルを未然に防ぎ、設備を長く安定して使うための判断材料として、ぜひ最後までご覧ください。

本コラムは、自動車用オイル・工業用潤滑油の専門メーカーで、当サイトを運営する三油化学工業株式会社が監修。三油化学工業は、創業70年以上にわたり高品質な潤滑油の開発・製造・OEM供給を行っています。
工業用潤滑油とは

工業用潤滑油とは、工場設備や産業機械の内部で発生する摩擦・熱・摩耗を抑え、機械を安定稼働させるために使用される潤滑油の総称です。対象は自動車のような「移動体」ではなく、減速機、油圧装置、コンプレッサー、軸受、チェーンなど、製造現場で長時間・連続運転される機械部品が中心になります。
工業用潤滑油の役割は、単に金属同士の摩擦を減らすことだけではありません。潤滑による摩耗防止はもちろん、運転中に発生する熱の放散、汚れや摩耗粉を抱え込む清浄分散、防錆・防食、密封(シール)性の補助など、複数の機能を同時に担います。そのため、用途に合わない油を選ぶと「動くけど壊れる」「回るけど早く摩耗する」といった、じわじわ効いてくるトラブルにつながりやすいのが特徴です。
また工業用潤滑油は、設備ごとに最適解が変わります。負荷の大きさ、回転数、温度帯、稼働時間、粉塵や水分の混入リスク、さらにはシール材や金属材質との相性によって、求められる性能はまったく異なります。カタログスペック上は同じ粘度でも、添加剤設計やベースオイルの違いで「現場での持ち」が変わることも珍しくありません。
工業用潤滑油は、消耗品ではなく設備のコンディションを左右する保全部材です。適切な油を適切な管理で使うことが、突発停止のリスクを下げ、修理費や交換部品コストを抑え、結果的に生産性の向上につながります。
工業用潤滑油の主な役割

工業用潤滑油は「機械を滑らかに動かすための油」というイメージを持たれがちですが、実際にはそれ以上に多くの重要な役割を担っています。これらの役割を理解しておくことで、なぜ用途ごとに潤滑油を使い分ける必要があるのかが見えてきます。
摩耗・焼付きの防止
工業機械では、金属部品同士が常に接触しながら動作しています。潤滑油はその間に油膜を形成し、直接接触を防ぐことで摩耗や焼付きを抑制します。特に高荷重・低速回転の設備では油膜切れが起こりやすく、潤滑油の油膜保持力が機械寿命を大きく左右します。
発熱の抑制・冷却
摩擦が発生すれば必ず熱が生じます。工業用潤滑油は、摩擦による発熱を抑えると同時に、部品から熱を奪って外部へ逃がす役割も果たします。特に連続運転設備では、潤滑油の冷却性能が不足すると油温上昇→劣化加速→トラブル発生という悪循環に陥りやすくなります。
清浄・分散作用
運転中に発生する摩耗粉や汚れ、酸化生成物を潤滑油が抱え込み、機械内部に堆積させないようにするのも重要な役割です。この清浄分散性能が不足すると、スラッジの発生や油路詰まりを引き起こし、潤滑不良や異音の原因になります。
防錆・防食
工場内や屋外設備では、湿気や結露、水分の混入を完全に避けることはできません。潤滑油には金属表面を保護する防錆成分が含まれており、腐食の進行を抑えます。特に停止時間が長い設備ほど、防錆性能の差がトラブル発生率に直結します。
密封(シール)性の補助
潤滑油は、部品同士のすき間を油膜で満たすことで、外部からの異物侵入や内部流体の漏れを抑える役割も果たします。油圧装置やギヤボックスでは、この密封性が圧力保持や安定動作に大きく影響します。
工業用潤滑油は、単なる「摩擦低減剤」ではなく、設備を総合的に守るための機能部材です。役割を理解したうえで選定・管理することが、設備トラブルを未然に防ぐ最も確実な方法と言えます。
工業用潤滑油の種類と用途

工業用潤滑油は一括りにされがちですが、実際には使用される機械や目的ごとに細かく種類が分かれています。それぞれ求められる性能が異なるため、用途に合わない潤滑油を使用すると、摩耗の進行やトラブルの原因になります。
油圧作動油
油圧作動油は、油圧機器の「力を伝える媒体」として使われる潤滑油です。建設機械、プレス機、射出成形機などで使用され、潤滑性能に加えて圧力伝達性、粘度安定性、耐摩耗性が強く求められます。特に油温変化による粘度変動が大きいと、動作不良やエネルギーロスにつながるため、使用環境に合った粘度選定が重要です。
ギヤ油
ギヤ油は、減速機やギヤボックスなど、歯車が噛み合う部分に使用される潤滑油です。高い面圧がかかるため、油膜保持力や極圧性能が不可欠となります。用途によっては耐熱性や耐衝撃性も求められ、一般的な潤滑油では対応できないケースも少なくありません。
コンプレッサーオイル
コンプレッサーオイルは、空気圧縮機の潤滑と冷却を目的とした潤滑油です。高温状態で連続運転されることが多いため、酸化安定性やスラッジ抑制性能が重要になります。オイルの劣化が進むと、吐出効率の低下や設備トラブルにつながるため、長寿命設計のオイルが選ばれる傾向があります。
切削油・加工油
切削油や加工油は、金属加工時の冷却・潤滑・洗浄を目的とした潤滑油です。工具寿命の延長や加工精度の安定に直結するため、加工条件や材質に応じた選定が不可欠です。最近では作業環境や安全性に配慮した低臭・低刺激タイプへの需要も高まっています。
グリース
グリースは、潤滑油に増ちょう剤を加えて半固体状にした潤滑剤で、給油頻度を下げたい箇所や密閉性が求められる部分で使用されます。耐水性、付着性、耐荷重性などが用途によって大きく異なり、軸受やチェーン、屋外設備など幅広い分野で活用されています。
工業用潤滑油は「どれでも同じ」ではなく、「用途ごとに最適解が異なる」のが最大の特徴です。機械の構造や使用条件を整理したうえで、適切な種類を選ぶことがトラブル防止につながります。
工業用潤滑油の選び方(失敗しない基準)

工業用潤滑油のトラブルは、「品質の悪い油を使った」ことよりも、「用途に合っていない油を選んだ」ことが原因で起こるケースがほとんどです。選定時にはカタログスペックだけで判断せず、実際の使用条件を整理することが重要になります。
使用温度と温度変化
潤滑油は温度によって粘度が大きく変化します。常温では問題なくても、高温下で粘度が下がりすぎると油膜切れを起こし、低温下では流動性不足による始動不良が発生します。使用時の最高温度・最低温度の両方を想定した粘度選定が不可欠です。
荷重・回転数・運転形態
高荷重・低速回転の設備では油膜保持力が重視され、高速回転設備では攪拌抵抗や発熱を抑える設計が求められます。また、24時間連続運転なのか、間欠運転なのかによっても適した潤滑油は異なります。運転形態を無視した選定は、摩耗や異音の原因になります。
使用環境(粉塵・水分・屋外条件)
粉塵が多い現場や水分混入のリスクが高い環境では、清浄分散性能や防錆性能が重要になります。屋外設備では、雨水や結露への耐性も考慮しなければなりません。環境条件を軽視すると、オイル自体の劣化が早まり、交換サイクルが短くなります。
材質・シール材との相性
潤滑油は金属だけでなく、ゴムや樹脂製のシール材とも接触します。オイルの成分によってはシールの膨潤や劣化を引き起こす場合があるため、設備メーカーの指定や実績を確認することが重要です。
メーカー指定・規格を守る
設備メーカーが指定する粘度や規格は、設計段階で検証された安全ラインです。指定を外れた潤滑油を使用すると、性能低下だけでなく保証対象外になる可能性もあります。まずはメーカー指定を基準とし、そのうえで使用環境に合わせた最適化を行うのが基本です。
工業用潤滑油の選定で重要なのは、「スペックを見ること」よりも「現場条件を正しく把握すること」です。条件整理ができれば、過剰品質や不足性能を避けた、無駄のない選定が可能になります。
粘度と規格の考え方(ISO・DIN・メーカー指定)

工業用潤滑油を選定する際、粘度と規格は必ず確認すべき重要な要素です。どちらか一方だけを満たしていても、設備に適合しているとは言えません。粘度は「油の性質」、規格は「性能の基準」として、それぞれ役割が異なります。
粘度とは何か
粘度とは、潤滑油の流れにくさを示す指標です。数値が低いほどサラサラしており、高いほど粘り気が強くなります。工業用潤滑油では、運転中の温度域で適切な油膜を維持できるかどうかが最も重要になります。
ISO VG粘度区分
工業用潤滑油では、ISO VG(ISO粘度グレード)が一般的に使用されます。ISO VG32、46、68などの数値は、40℃における動粘度の範囲を示しており、設備メーカーの指定にも多く採用されています。数値が大きいほど高温・高荷重向け、小さいほど低温・高速回転向けと考えるのが基本です。
粘度が合っていない場合に起こるトラブル
粘度が低すぎると油膜が切れやすくなり、摩耗や焼付きが発生しやすくなります。逆に粘度が高すぎると、攪拌抵抗が増えて発熱やエネルギーロスにつながります。どちらも設備寿命や効率を低下させる原因になります。
工業用潤滑油の主な規格
工業用潤滑油には、用途ごとにさまざまな規格が存在します。代表的なものとして、ISO規格、DIN規格、JIS規格、そして設備メーカー独自の指定条件があります。これらの規格は、耐摩耗性や酸化安定性、防錆性など、一定の性能基準を満たしていることを示しています。
メーカー指定が最優先
設備メーカーが指定する粘度や規格は、その機械で安全かつ安定して使用できる条件として設定されています。指定外の潤滑油を使用すると、トラブル発生時に保証対象外となる可能性があるため注意が必要です。まずはメーカー指定を守り、その範囲内で使用環境に合わせた調整を行うことが重要です。
工業用潤滑油は、「適切な粘度」と「満たすべき規格」の両方が揃って初めて本来の性能を発揮します。数値だけで判断せず、設備条件と合わせて総合的に選定することが重要です。
工業用潤滑油でよくあるトラブルと原因
工業設備のトラブルは、機械そのものの故障ではなく、潤滑油の選定や管理が原因となって発生しているケースも少なくありません。ここでは、現場で特に多い代表的なトラブルと、その主な原因を整理します。
異音・振動が発生する
運転中に異音や振動が目立つようになった場合、油膜が十分に形成されていない可能性があります。粘度が低すぎる、劣化が進んでいる、または高荷重条件に対して油膜保持力が不足していることが主な原因です。
摩耗や焼付きが進行する
ギヤや軸受の摩耗が早い、焼付きが発生するといったトラブルは、潤滑性能不足が疑われます。極圧性能が不足している、交換サイクルが長すぎる、使用条件に対して潤滑油の設計が合っていない場合に起こりやすくなります。
スラッジや沈殿物が発生する
オイルタンクや配管内にスラッジが溜まる場合、酸化劣化や清浄分散性能不足が原因となることが多くあります。高温環境での長時間運転や、水分・異物混入が続くと、オイル劣化は急速に進行します。
油温が異常に上昇する
油温上昇は、粘度過多による攪拌抵抗増加や、摩擦増大による発熱が原因となることがあります。結果としてオイルの酸化が加速し、性能低下と交換サイクル短縮につながります。
オイル寿命が極端に短い
頻繁にオイル交換が必要になる場合、使用環境に対して潤滑油の耐久性が不足している可能性があります。温度条件や負荷条件を見直し、より酸化安定性や耐久性に優れた潤滑油を選定することで改善できるケースも多くあります。
工業用潤滑油のトラブルは、油そのものの品質問題ではなく「選定ミス」や「管理不足」が原因となることが大半です。トラブル発生時は、設備だけでなく潤滑油の条件もあわせて見直すことが重要です。
市販の工業用潤滑油で限界を感じるケース
工業用潤滑油は市販品でも十分な性能を持つものが多くありますが、すべての現場条件に最適とは限りません。特定の環境や使い方では、市販オイルでは対応しきれず、トラブルが繰り返し発生するケースも見られます。
高温・高負荷条件での連続運転
高温状態で長時間連続運転される設備では、一般的な市販オイルでは酸化劣化が早く進み、油膜保持力や清浄性能が低下しやすくなります。その結果、摩耗やスラッジの発生頻度が高くなり、交換サイクルが短縮される傾向があります。
特殊な温度帯や環境条件
極低温環境や高湿度環境、粉塵が多い現場などでは、標準的な配合の潤滑油では性能を発揮しきれないことがあります。特に屋外設備や季節変動が大きい現場では、汎用オイルでは対応範囲に限界が出る場合があります。
古い設備・特殊構造の機械
年式の古い設備や独自構造を持つ機械では、最新規格の市販オイルが必ずしも最適とは限りません。シール材や金属材質との相性によっては、油漏れや異音が発生するケースもあります。
トラブルが繰り返し発生している現場
異音、摩耗、スラッジなどのトラブルが何度も発生している場合、単にオイルを交換するだけでは根本的な解決にならないことがあります。使用条件に対して、潤滑油の設計そのものが合っていない可能性を疑う必要があります。
設備ごとの最適化が求められる場合
同じ種類の設備でも、稼働時間や負荷条件、設置環境が異なれば最適な潤滑油も変わります。市販オイルでは細かな条件調整が難しく、「もう一段最適化したい」という場面で限界を感じることがあります。
市販の工業用潤滑油は万能ではなく、「多くの現場で使える平均点」の設計です。特殊条件やトラブルが続く場合には、用途に合わせた設計そのものを見直す必要があります。
工業用潤滑油でOEM・オリジナル設計という選択肢
工業用潤滑油は「既製品から選ぶもの」というイメージを持たれがちですが、近年では使用条件に合わせて設計するOEM・オリジナル潤滑油を導入する企業が増えています。特定の設備や環境に最適化することで、トラブル削減や保全コストの低減につながるためです。
なぜOEM・オリジナル潤滑油が選ばれているのか
市販オイルは幅広い用途に対応できる一方で、個別の現場条件までは最適化されていません。OEM設計では、使用温度、負荷、回転数、稼働時間、環境条件を踏まえた配合が可能となり、「この設備のための潤滑油」を作ることができます。
トラブル低減と設備寿命の延長
設備に合わない潤滑油を使い続けると、異音や摩耗、スラッジといった小さなトラブルが積み重なります。オリジナル設計の潤滑油では、こうした要因を事前に排除できるため、突発停止のリスク低減や設備寿命の延長が期待できます。
長期的に見たコスト削減
OEM潤滑油は一見するとコストが高く感じられることもありますが、交換サイクルの延長や修理・部品交換の減少を考慮すると、トータルコストが下がるケースも少なくありません。潤滑油は「価格」ではなく「運用コスト」で考えることが重要です。
自社用途・自社ブランドとしての展開
OEM設計は自社設備向けだけでなく、販売店や整備業者が自社ブランドとして潤滑油を展開するケースにも活用されています。「この設備にはこのオイル」という提案が可能になり、差別化やリピート率向上につながります。
工業用潤滑油のOEM・オリジナル設計は、特殊な選択肢ではなく「現場最適」を実現するための合理的な手段です。市販オイルで限界を感じた段階が、検討のタイミングと言えます。
OilTech Japanの工業用潤滑油OEM
OilTech Japanでは、70年以上にわたる潤滑油OEMの実績をもとに、工業用設備の使用条件に最適化した潤滑油の開発・製造を行っています。単にカタログスペックを満たすだけでなく、実際の現場で「長く安定して使える」ことを重視した設計が特長です。
用途・設備条件から逆算した配合設計
使用温度、負荷条件、回転数、連続運転時間、設置環境などをヒアリングし、それらを前提にベースオイルと添加剤を選定します。設備メーカー指定の粘度・規格を守りつつ、現場特有の課題に対応した設計が可能です。
小ロット試作から量産まで対応
オリジナル潤滑油は大ロット前提というイメージを持たれがちですが、OilTech Japanでは小ロット試作から対応可能です。実機での使用感や効果を確認したうえで、本格展開へ進めるため、導入リスクを抑えた運用ができます。
国内外向け設備・輸出案件にも対応
国内設備はもちろん、海外向け装置や輸出案件に対応した潤滑油設計も可能です。使用地域の気候条件や規制を考慮し、長期安定供給を前提とした仕様をご提案します。
「どの油を使えばいいかわからない」段階から相談可能
現場で異音や摩耗、交換サイクルの短さに悩んでいるが、原因がはっきりしないというケースも少なくありません。OilTech Japanでは、現状整理の段階からヒアリングを行い、必要に応じて市販品との違いや改善ポイントを明確にしたうえで最適な選択肢をご提案します。
工業用潤滑油は、設備の寿命と安定稼働を左右する重要な要素です。既製品に合わせるのではなく、設備に合わせて設計することで、トラブル低減とコスト最適化の両立が可能になります。
まとめ
工業用潤滑油は、単なる消耗品ではなく、設備のコンディションと生産性を左右する保全部材です。種類や粘度、規格を理解し、使用条件に合った潤滑油を選定することで、トラブルの多くは未然に防ぐことができます。
一方で、市販の工業用潤滑油では対応しきれない環境や条件があるのも事実です。高温・高負荷・連続運転といった厳しい条件下では、用途に最適化したOEM・オリジナル設計という選択肢が、有効な解決策になります。
工業用潤滑油でお悩みの場合は、「油を変える」のではなく「設計を見直す」視点を持つことが重要です。
工業用潤滑油の選定や、オリジナル潤滑油(OEM)の導入をご検討中の方は、用途や設備条件をもとにお気軽にご相談ください。
